4000 Chinese Restaurant 南青山 菰田 欣也 Kinya Komoda

素材にも、料理にも、そして自分自身にも正直に

日本の中国料理の歴史の一角を、まぎれもなく担い続けている四川飯店グループ。そこに30年間勤め、2代目の総帥である陳建一氏を支え続けてきた菰田欣也氏が独立して構えたのが「4000 Chinese Restaurant 南青山」だ。円熟の料理人が発信する新境地に、注目と高評価が集まる。

四川そのままではなく、東京の、そして日本のお客に向けた料理を

2018年の12月にオープンした「4000 Chinese Restaurant南青山」。店名の「4000」は「ヨンセン」と読む。そしてそれは「シセン」とも読める。店主は菰田欣也氏。長年にわたり四川料理の普及に従事してきた料理人だ。その菰田氏は、独立して構えた自店にあえて漢字で「四川」と表記せず、「4000」とした。「あまり強く“四川料理”と主張させたくなかったから」なのだという。

そう考える大きな理由は、今の菰田氏の心境にある。「この店のテーマは、“自分の出身は四川。そして今は東京で自分の料理を作っている”。これが今の私です」という。四川そのままではなく、今、目の前にいる東京の、そして日本のお客に向けた料理を追求する。「四川の伝統料理に対する敬意はあります。しかしここは日本。料理人が間にフィルターとして入って、どのように提案するかが大事。提案の仕方を間違えてしまうと受け入れてもらえません」と話す。

  • 「4000 Chinese Restaurant 南青山」の看板
    「4000」は、読み方によっては「しせん」すなわち「四川」。あえて強く打ち出さず、さりげなく「四川料理店」と伝える。
  • 「4000 Chinese Restaurant南青山」のマーク
    数字の4に、3重の輪をかけたマーク。店名にある「4000」(読み方は“よんせん”)をデザインした、遊び心にあふれる趣向。

誰のまねでもない自分のスタイルを突き進む

菰田氏はまた、30年間務めた店で得た学びの中でも、最も大きいのは「料理を正直に作る」ということだという。

「素材に対しても、料理を作ることに対しても正直に。手を抜くといったごまかしをすると、それがクセになります」

正直であるのは、自分自身に対しても同様だ。以前の店では総料理長というポジションにあったが、「やはり自分は料理が作りたい」という思いで退職する道を選んだのも正直な気持ちに従ったから。その後、四川風火鍋専門店「ファイヤーホール4000」をオープンしたのも、「いい素材、しっかりとした味付けの、おいしい火鍋を自分が食べたかったから」。

そして「4000 Chinese Restaurant 南青山」は、器選びや店内装飾から菰田氏自身が納得がいくまで取り組んで作った店。じっくりと料理に向き合いながら、サービスも含めたトータルなもてなしをしたい思いが強まってオープンした。
「4000 Chinese Restaurant 南青山」菰田欣也氏

  • 「4000 Chinese Restaurant 南青山」の店内
    カウンターは8席。落ち着いた色の木目調のベースに、漆製のランチョンの赤色が映える、シックで洗練された雰囲気。
  • 「4000 Chinese Restaurant 南青山」のテーブルコーディネート
    濃い色の木目、「輪島キリモト」に特注した漆の赤いランチョン、有田焼「金照堂」の艶やかな青色の器。このセットでお客を迎える。

「多くの人に『この店は集大成だね』と言われますが、まだまだ毎日もがいています(笑)。料理も、経営者としてもそう」と話す。そして、「実は、この先“何歳になっても料理を作り続けたい”とは思っていません。少しでもおいしくない料理を作るようになったら、やめます。私よりおいしいと思える料理を作るスタッフが現れたら、店を譲ってもいい」。

あくまでも自分に対して正直で、ごまかしがない。「だからこそ、毎日が勝負。悔いが残らないよう、誰のまねでもない自分のスタイルを突き進みます」

  • 「4000 Chinese Restaurant 南青山」菰田欣也氏愛用のすりおろし器
    切れ味のよいチーズのすりおろし器を、料理の仕上げに愛用。金華ハム、白黒トリュフなどをすりおろし、香りを立たせる。
  • 「4000 Chinese Restaurant 南青山」で愛用の豚肉
    群馬県太田市にある「加藤ポーク」の豚肉を愛用。甘みのある脂身が特徴。火鍋の店「ファイヤーホール4000」でも使っている。

Photo Masahiro Goda
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています