茶禅華 川田 智也
洗練された中国料理は「和魂漢才」から
中国料理の古典への造詣が深く、かつ、日本料理の繊細な感覚も重視する「茶禅華」川田智也氏。麻布長江などで中国料理を10年間修業した後、日本料理 龍吟で5年間働き、うち2年間は台北の祥雲龍吟に赴任したという経験の持ち主だ。2017年2月にオープンした茶禅華のシェフに就任し、同年11月発表のミシュランガイドで二つ星を得るなど、またたく間に高い人気と評価を獲得。料理と併せて中国茶にも意欲的に取り組み、独自の技術と表現を追求する。
「和魂漢才」をテーマに伝統の中国料理を
南麻布の静かな住宅街の一角にたたずむ一軒家スタイルの中国料理店、茶禅華 。中国の伝統料理に現代的な洗練を加え、さらに和の要素を織り込んだ料理をコースで提供する。
同店のオープンは2017年の2月。四川料理の名人、麻布長江の長坂松夫氏のもとで修業を重ね、さらに日本料理の技術を論理的に追求する日本料理「龍吟」で経験を深めた川田智也氏がシェフを務めるとあって、開店当初から大きな期待と興味を集めた。その期待の上をゆく料理の世界を作り上げ、高い評価を獲得している川田氏。自らのテーマと語る「和魂漢才」の道を進む。
日本素材と中国料理の手法の融合
「『和魂漢才』を自分のテーマとして掲げているのは、日本ならではの繊細な感覚、食材を慈しむ精神をベースとしつつ、調理では伝統的な中国料理の本質を尊重し、その技術を極めたいという考えからです」と川田氏は言う。
「日本の素材と向き合い、中国料理の手法と融合させるという意味も込めています。例えば、柚子。大好きな食材で、特に青柚子は初夏を象徴する香りです。柚子の原産は揚子江流域ですが、中国の柚子は大味。一方、平安時代に日本に持ち込まれた柚子は、日本人好みのきれいで繊細な風味に改良、昇華されました。こうした変化が自分の『和魂漢才』の料理とリンクするように感じ、引かれるのです」
お茶は医食同源の本質を突いている
中国茶は、「和魂漢才」とともに川田氏が店のテーマに掲げる重要な存在だ。
なお、お茶の淹れ方でも独自の方法を追求する川田氏。例えば燻製香が特徴のラプサンスーチョンは、茶葉に45℃の湯を加えて30分間おいた後、氷温でまる2日間おく。
「こうすると旨みがしっかりと出ながら渋みは出ず、独特の燻製香もとても上品に香るようになります」
お茶の個性を尊重しながら、今までにない方法にも柔軟に取り組む。「お茶は究極の食材だと思うのです。医食同源の本質を突いている。きっと、死ぬ間際に口にしてもおいしく感じられ、心身を癒やすはず。そんな料理を目指しています。お茶は偉大な先生ですね」
Photo Masahiro Goda
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています