懐石 辻留 藤本 竜美 「辻留料理塾」で取り組んでいること

今、当店では懐石料理を一般の方々にお教えする「辻留料理塾」を開いており、私は講師を務めています。その時に強く感じるのは、やはり人に教える際にはしっかりとした知識が必要だということ。あらためて本を読み、自分の知識を確かなものにしています。

なお料理塾では、生徒の皆さまに個々の料理の作り方を学んでいただくことに加え、日本料理全体のすばらしさを実感していただきたいと思っています。

そこで、料理塾で特に力を入れて教えているのが、だしです。今はだしの素を使うご家庭が多く、頑張っている方でもだしパックというのが実際のところだ思います。それは現代の姿として否定はしませんが、昆布と鰹節で基本的なだしをとったらどんなにおいしいか……。そこを知ってほしいのです。

実際、「だしをとりました! 習った通りにしたら、おいしくとれました」なんて言ってくださる生徒さんがいると、だしの価値をお伝えできてよかった、と、嬉しくなります。

和食はユネスコ無形文化遺産に登録されていますが、肝心の日本人が自国の料理を大切にしているかというと疑問です。なので、我々日本料理に携わる人間は、本などで知識を得ながらしっかりと勉強し、後世に伝えていかなくてはならない。

そうした思いのもと、私としては、料理塾を通して、みなさまに日本料理のことを広くお伝えできればいいな、と思っています。

Text Izumi Shibata

藤本 竜美

懐石 辻留 藤本 竜美

Tatsumi Fujimoto
1966年生まれ、山口県出身。仕出し専門店の家に生まれ、幼少より料理に親しむ。高校卒業後「辻留」赤坂店に入り、辻嘉一氏、義一氏に学ぶ。同店にて経験を重ね、2016年頃より料理の責任者を務める。
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