旨みの深いスープ、細麺のほどよい弾力、品よくじわりと辛いラー油、肉味噌のコクが調和する「茶禅華」の冷やし担々麺。スープのベースとなる清湯は、「鶏ガラを煮出し、こしたものをまずは氷温で3日間寝かせて旨みを深める。そして使う前にひき肉で澄ませつつ香りを復活させる」という、「茶禅華」オーナーシェフ・川田智也氏が独自の手法で作ったもの。冷たい料理でも、スープにコクと香りがしっかりと感じられるのはこの清湯があってこそ。
夏の定番、冷やし担々麺を、茶禅華ならではの洗練で仕立てた。スープは自家製ゴマペースト、鶏ベースの清湯、豆乳で作る。豆乳が両者を乳化させて、ごくなめらかな仕上がりに。スープも麺もキリッと冷やし、自家製ラー油と四川山椒(さんしょう)をふって仕上げる。
四川飯店創業者の陳建民氏へのリスペクトも込めた一品
「豆乳もポイントでふくよかな風味が加わるのみならず、清湯とゴマペーストを十分に乳化させる。ごくなめらかな口当たりが生まれます。もともと四川の担々麺は、汁なしです。しかし、『ラーメンが好きな日本人には汁ありがおいしいはず』と四川飯店創業者の陳建民さんがカスタマイズした、というのは有名な話。その、目の前のお客さまに向き合い、本来の伝統料理の本質をとらえながら改変する姿勢を尊敬しています」(川田氏)
冷やし担々麺は、そんなリスペクトも込められた一品だ。
ところで、中国には本来冷たい料理はない。「冷菜といっても、実際は常温。彼らは体を冷やすのを好まない」そうだ。近年こそ氷菓や氷入りのドリンクも人気だが、本来、医食同源が根付いている中国の食文化では冷たい品は口にしない。
「その一方で、日本では夏、そうめんに氷を敷くなど、思いきり冷やして涼を表現します。熱いものは熱く、冷たいものはしっかり冷やすことを日本人は好む。その感覚は尊重したいので、当店では冷か温か、温度にはメリハリをつけています」(川田氏)