「カンテサンス」オープン初日から毎日出しているという料理「塩とオリーブオイル、ヤギ乳のババロアの前菜」。コースの初めのほうに出す、名刺代わりとなる一品と「カンテサンス」岸田周三氏は話す。この料理への思い、生まれたきっかけについて訊いてみた。
これがカンテサンスの味

主役は塩とオリーブオイルで、岸田氏の料理はほぼすべてに、この塩とオイルが使われている。いわば味の根幹で、一番こだわっている部分。それに焦点を当てたのが、この料理だ。
「たいていの料理は食材が主役で、調味料は脇役なのですが、ここでは逆。調味料を前面に出し、『これが当店の味です』と、お客様に伝えます。コースの初めのほうに出す、名刺代わりとなる一品です」(岸田氏)
200 品、料理を準備していた
この料理が生まれたのは、パリで働いていた頃。自分の店を持った時に出す料理を……と、200品ほど考えて書き留めていたのだそう。アイデアだけのもあれば、試作したものもあるという。
「パリでは、修業仲間だった佐藤伸一さん(パリのパッサージュ53)と、休みの日に毎週、人を招いてテーマに沿った料理を作って出す会を開いていたのですが、そこが試作と訓練の場になりました」(岸田氏)
今でもたまにその時のノートを読み返す岸田氏。「馬鹿げたアイデアだな!」と笑ったり、意外と使えるアイデアもあったり。その中でもこのオリーブオイルと塩の料理は、最初から完成していたタイプの品だ。
「12年間ほぼ修正なしで、出し続けています」(岸田氏)

カンテサンス 岸田 周三
Shuzo Kishida
1974年愛知県生まれ。フランスではパリ「アストランス」のパスカル・バルボ氏の右腕として働く。帰国翌年の2006年カンテサンスのシェフに。2011年にオーナーシェフとなり、2013年に白金から御殿山に店を移転した。
このシェフについて