エディション・コウジ シモムラ 下村 浩司 山口の食材で作るアートな秋味

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「以前、山口に伺った際、地元の肉を食べさせてほしいとお願いしたら出てきたのが、地鶏。あの鶏は、おしかったな」と振り返る「エディション・コウジ シモムラ」のオーナーシェフ・下村浩司氏。

山口の地鶏といえば、長州黒かしわが有名だ。旨みたっぷりで、かむほどに味が出てくる肉である。今回は、この長州黒かしわのモモ肉に岩国れんこんや黒米、スパイスなどを入れたファルスを作ってムネ肉に塗り、フォアグラを油の代わりに使って焼いた。歯車のようにデザインされた岩国れんこんがアクセントだ。

「岩国れんこんは、粘りがしっかりあるけど、強すぎないので、食感が際立ちます。味も濃厚。土壌に恵まれているのでしょう」と下村氏。

長州黒かしわのパルフェ
長州黒かしわのパルフェ。「ファルスを塗って焼くことで、ムネ肉に間接的に火入れができて、ちょうどいいんです」とシェフ。ソースは旨みの濃厚な長州黒かしわのジュ。

魚料理は、山口県が全国1位の漁獲量を誇るアマダイを使った。延縄漁が中心で、漁場が近く鮮度が高いアマダイは、サクサクと香ばしいうろこも一緒に味わう。

「まず、バットに5ミリくらい太白胡麻油を入れて、うろこを下にしてつけます。そして、うろこを下にして、たっぷりの胡麻油で焼く。そうすることで、本来焼けにくいうろこに火が入りやすくなります」

デザートは、二十世紀梨の秋芳梨が主役。甘酸っぱく、シャリッとした歯ごたえだが、鮮烈な味わい。山口県のみで栽培される長門ゆずきちの絞り汁に、シロップ、サフランを加えて真空でマリネしている。

「梨は真空にすることで中心が透明になります。柚子だと梨の風味を覆ってしまうけど、長門ゆずきちは酸味が穏やかで相性がいいんですよ」

  • アマダイのうろこ焼き
    アマダイのうろこ焼き。アマダイが食べているだろう甘エビに、キャビアやツノマタ(沖縄の海藻)を加え、タルタル風に仕上げたものを敷いている。緑のソースにはカリフラワーと春菊、長門ゆずきちを使用。
  • 梨のデザート
    デザートは、二十世紀梨の秋芳梨が主役。甘酸っぱく、シャリッとした歯ごたえだが、鮮烈な味わい。山口県のみで栽培される長門ゆずきちの絞り汁に、シロップ、サフランを加えて真空でマリネしている。
  • 長州黒かしわのモモ肉
    長州黒かしわのモモ肉。古くから神聖なものとして神社などで飼われていた天然記念物「黒柏鶏」を元とした山口県初の地鶏。
  • アマダイ
    アマダイの漁獲高は全国1位を誇る。新鮮なアマダイは淡白ながら、ほのかに甘く、香ばしく焼いたうろこも絶品だ。
  • アマダイを焼く
    アマダイをうろこを下にして焼く。アマダイは事前に太白胡麻油につけておくと、うろこに入り込んだ油脂が勝って火が通る。
  • アマダイを焼く
    反転させ、身も焼いていく。サクサクに焼けたアマダイの皮目は、ブラックオリーブの塩(スペイン産)がよく合う香ばしい味わい。
  • 海藻
    アマダイの料理に使った沖縄の海藻、ツノマタ。色や形には個体差が大きい。海藻こんにゃくを始め、しっくいの材料にも使われる。
  • 秋芳梨と長門ゆずきち
    (右)秋芳梨は秋吉台の水はけのいい土地と気象条件を生かした甘くて大きい梨。(左)長門ゆずきちはゴルフボールよりやや大きい。
  • 秋芳梨をむく
    秋芳梨をむく。「二十世紀梨は食感が少しザラザラとしているので、横に薄くスライスしたほうがおいしく感じます」と下村氏。
  • 梨をつけた様子
    長門ゆずきちの絞り汁にサフラン、シロップを加えたものに梨をつける。長門ゆずきちは種が少なく、果汁が多いのが特徴だ。

Photo Masahiro Goda Text Rie Nakajima

下村 浩司

エディション・コウジ シモムラ 下村 浩司

Koji Shimomura
1967年茨城県生まれ。大阪・辻調理師専門学校卒業後、都内フランス料理店で修業を始め、 1990年に渡仏。「ラ・コート・ドール」「トロワグロ」「ギィ・サヴォワ」で8年間修業を重ね、1998年に帰国。六本木「ザ・ジョージアンクラブ」を経て、2001年に乃木坂「レストラン・フウ」のシェフに就任。2007年に独立、エディション・コウジ シモムラのオーナーシェフに。『ミシュランガイド東京』で二ツ星を獲得。
このシェフについて