ル スプートニク 髙橋 雄二郎 「ル スプートニク」に咲く深紅のバラ

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「ル スプートニク」のいわば“名刺代わり”の料理とオーナーシェフの髙橋雄二郎氏が位置付けているのが、今回紹介する「“薔薇”フォアグラ ビーツ」だ。深紅のバラの形をした、食べるのが惜しいほどに美しい一品。同じ色のソースとパウダーが、皿一面にグラデーションを描く。ドラマチックなビジュアルだが、色彩は赤、そして皿のプラチナのみに抑えられ、シックで引き締まった印象を示す。

深紅の色の正体は、料理名にあるビーツ。そして主役のバラの土台となっているのは、フォアグラのテリーヌだ。フォアグラのテリーヌにバラの風味がほのかに香るシート状の赤いゼリーをかぶせ、ビーツのピュレで作った花びら形のチップスを挿す。ビーツのソースとビーツを乾燥させて作るパウダーを盛り付けて、完成する。

「ル スプートニク」の“薔薇”フォアグラ ビーツ
テーブルを華やかな空気に包む「“薔薇”フォアグラ ビーツ」。まずは花の形と深紅の色の美しさに驚き、口にすればビーツ、フォアグラのテリーヌそれぞれの明確な味に驚く。

ベーシックな手順を丁寧に踏んで作られるフォアグラのテリーヌはキレがよく、かつフォアグラの風味とコクを堪能できる、フランス料理の醍醐味を楽しめる味わい。「バラの形」という驚きに負けない味の厚みがあるからこそ、インパクトのある一品として深く記憶される。

なおビーツのチップスは、大小の花びら形を抜いた特製の型にビーツのピュレを薄く塗ってかたどり、低温のオーブンで乾燥焼きにし、温かいうちに一枚ずつ立体的に曲げて作るという、非常に手間のかかるもの。その手間をかけてこその完成度が、この料理の風格を一層高めている。

髙橋 雄二郎

ル スプートニク 髙橋 雄二郎

Yujiro Takahashi
1977年、福岡県生まれ。大学卒業後、調理師専門学校に進みフランス料理の道を選ぶ。都内で修業したのち27歳で渡仏。ミシュラン三つ星店、ビストロ、ブーランジュリー、パティスリーと、幅広く経験を積む。帰国後は「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」のシェフなどを経て独立。2015年「ル スプートニク」を開業。
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