ドミニク・ブシェ トーキョー ドミニク・ブシェ シンプルで深いブール・ブランのソース

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互いを高め合う2種のソースの融合

フランスを代表する数々のレストランでシェフを務めたうえで、自分自身が追求したい道を実現しているドミニク・ブシェ氏。料理で、ソースを最も重視していると話すブシェ氏に2種のソースとオマールの調和が楽しめる一品を紹介してもらった。

ドミニク・ブシェ氏のオ マールの料理
ほぐしたオマールの身をビスクソースで和え、マッシュポテトを重ねた。基本的なソースであるブール・ブランにキャビアとシブレットを加え、周りに流す。2種のソースとオマールの調和を楽しむ。

今回ブシェ氏に紹介してもらったオマールの料理は、ソースがポイントだ。この料理は、牛ひき肉とマッシュポテトを重ねてオーブン焼きにした伝統料理「アッシ パルマンティエ」が発想の出発点となっている。

牛ひき肉の代わりにほぐしたオマールを使い、オマールの殻からとる濃厚なビスクソースで和えて、エストラゴンで香りづけ。これをマッシュポテトとともにタンバル型に整える。さらにパン粉をふり、オーブンで焼いて、香ばしさと食感をプラス。周りに流したソースは、フランス料理のごく基本のソースであるブール・ブラン。バター、エシャロットのみじん切り、白ワイン、白ワインヴィネガー、レモン汁というシンプルな材料で作る、そしてだからこそ料理人の腕、ソースへの向き合い方が如実に表れるソースなのだ。

酸味とバターのバランスをどうとるか? エシャロットを白ワイン、白ワインヴィネガーでどれだけ煮詰めるか? 余分なものを入れなくても食べた人の印象に深く残るソースは作れる。ブール・ブランは、その典型とブシェ氏。オマールを和えたビスクソース、周りに流したブール・ブラン。互いを高め合う2種のソースの融合も見どころの一品だ。

料理を飛躍的に高める魔法

「ソースは手間のかかるもの。今ではフランスの料理人ですらおざなりにすることが少なくありません。しかし、ソースはフランス
料理の技術の結晶であり、フランス料理を他の料理とは一線を画する存在たらしめているもの。時代を超えて引き継がれるべきものだと思います。つまり、私のソースへの思いは格別なのです。ですから、もう少しソースの話をさせてください(笑)」とブシェ氏。

フランス料理の基本構成は、主食材、ソースあるいは食材から出るジュ(エキス)、付け合わせ。

「今は形を崩す人も多いですが、私自身は先人の技に敬意を払い革新を加えながら、次世代に伝える役割を担うのが自分の道、という信念を持っています。その中でも大事にしているのは、シンプリシティ。基本の3要素を調和させ、研ぎ澄ませ、時代に合った軽さ、香り高さを持たせること。昔は重いソースがたっぷりと添えられた料理もあり、そのイメージが強いかもしれませんが、ソースは時代とともに軽やかな変容を遂げてきました。しかし実際は、内容と量に気を配れば、ソースは料理を飛躍的に高めてくれる。当店では、多くのお
客様が「ソースがおいしくて完食した」とおっしゃいます。ソースは、やはり次世代に引き継がれるべきフランス料理の宝です」

Photo Masahiro Goda

ドミニク・ブシェ

ドミニク・ブシェ トーキョー ドミニク・ブシェ

Dominique Bouchet
1952年フランス・シャラント地方生まれ。ジョエル・ロブションのもとで働いたのち、「トゥール・ダルジャン」と「オテル・ド・クリヨン」の総料理長を務める。2004年に独立しパリ8区にレストラン「ドミニク・ブシェ」を開業。2013年に日本初の店を銀座にオープン。現在はパリ、東京、金沢で4店を展開する。
このシェフについて