料理で心がけているのは、食材の持ち味を引き出し、いろいろな国の要素を自由にミックスしながらも、シンプルに仕立てること。―そう話すのは、「マルディ・グラ」の和知徹氏だ。2001年に「マルディ グラ」をオープンしてから、この考え方は今も変わっていないと言う。
その一方で、この年月で、お客様のほうは大きく変わったと感じるという和知氏。
「例えば、アジアや中東の個性の強いスパイスやハーブに抵抗感がなくなり、むしろ積極的に楽しむようになりました。肉に関しても、赤身肉の魅力が浸透し、かむほどに旨みが出るしっかりとしたものを好む人が増えましたね。かつては、肉は『とろける』『柔らかい』が褒め言葉でしたが、今では肉を評価する選択肢が広がり、それがお客様の間に浸透していると思います」(和知氏)
今回和知氏に紹介してもらう料理も、肉のしっかりとした旨みを存分に楽しめる、仔羊の串焼きだ。
「味付けは中央アジアとトルコの混合。マスタードとヨーグルトを揉み込み、粗挽きにしたクミンをかけています。この骨太な風味に、筋肉の繊維がしっかりとした、力強い味と食感が特徴のフランス産の仔羊肉を合わせました。炭火で表面を香ばしく、中はしっとりと焼き上げ、この肉が持つ味わいを引き出しています」(和知氏)
Photo Masahiro Goda
マルディ グラ 和知 徹
Toru Wachi
1967年兵庫県生まれ。調理師学校を卒業後、「レストランひらまつ」を経て、1998年に銀座・三原小路の「グレープ・ガンボ」の立ち上げからシェフに。2001年「マルディ グラ」を独立開業。
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