プリズマ 斎藤 智史 今の自分を切り取る料理

Loading

「プリズマ」のオーナーシェフ、斎藤智史氏は料理を更新し続け、かつそこに自分が誠実に反映していることを徹底する料理人だ。11〜12品からなるコースを一人で調理し、表現を追求。そんな氏の料理と姿勢に共感するお客が集い、ゆったりとした時間を作っている。

料理における信条は、「最新作が、最高作」と話す斎藤氏。しんな氏の、研ぎ澄まされた感性が生み出す至高の一品をご紹介しよう。

「プリズマ」斎藤智史氏の料理
塩で軽く水分を抜いたアジを瞬間燻製にし、ハーブ入りのクレーマ、乾燥させた野菜やオリーブとともに。仕上げにフリウリの名ワイン生産者、グラブナーの葡萄を使ったビネガーをスプレーでひと吹き。

最新作が最高作

斎藤氏の料理における信条は、「最新作が、最高作」。その時々で考える料理こそが、今の自分を反映しているはず。かつての自分が考案したものを今出しても、自分の模倣になるだけと話す。

「もちろん人は誰でも後退する可能性もあります。最高作を更新し続けられるかどうかは、本人の生き方次第です。この考えから、私は同じ料理を繰り返し作ることをしません。過去の料理は忘れますし、レシピも書きません。お客様のほうがよく覚えているくらい。『もう一度あの料理を』とリクエストをいただいても作りません。人間には『忘れる』という特性がありますが、創作においては、これが非常に大事なのでは、と最近思っています」(斎藤氏)

試作も極力しないという斎藤氏。日々の料理を、結局は広い意味での試作だと考えるからだ。

「例えばパスタなら、過去に何万回もいろいろ作ってきた構成が体の中に入っています。その積み重ねの上に生まれる料理と、考えに考えて試作を繰り返した料理とでは、瞬発力が全然違う。今の自分を切り取り、それがそのまま反映されていないのであれば、料理を作る意味はありません」(斎藤氏)

斎藤 智史

プリズマ 斎藤 智史

Tomofumi Saito
1974年北海道生まれ。ロンバルディア州の「ダ・ヴィットリオ」などで2年間経験を積む。2004年「イル リストランテ ネッラ ペルゴラ」を広尾に開業。2011年「プリズマ」を南青山にオープンする。
このシェフについて