銀座 小十 奥田 透 季節の食材を贅沢に。それがお椀の醍醐味

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今回「銀座 小十」の奥田透氏に作ってもらったのは、クエを主役に、冬の美味を盛り込んだお椀。クエは、36㎏もの大きさ。ここまで大きくなると魚を超えて、上質な白身の豚肉の趣さえある。

「その生命力にあふれたクエを、たっぷりと味わっていただきます。炙あぶったクチコも、十分な大きさを持たせて。舞茸と芽蕪とともに盛り付け、あられに切った柚子を添えます」(奥田氏)

36㎏大のクエを主役にした煮物椀の完成。その味わいの迫力は、まさに桁違い。たっぷりと大きな切り身を盛り付ける。炙ったクチコも、しっかりとした存在感。舞茸、芽蕪とともに椿椀に盛り付けた、冬を存分に味わう一品だ。

「『煮物』と名が付くくらいなので、具材が大事。季節の恵みを盛り込み、まさに旬をいただく、贅沢な満足感を大事にしています。もちろん、出汁も重要。椀種に沿う内容とし、その深い味わいをしっかりと楽しんでいただきます」(奥田氏)

茶懐石での料理一品ずつに役割があるように、料理店の献立も「どれがメインディッシュ」というわけではなく、それぞれに存在感を持たせている奥田氏。

「ただ、お椀は大事な要素であることが確か。季節感が込められ、出汁の旨みも豊かで、油脂を加えるでもない、食材そのものでありながら、インパクトがある。そうした日本料理の世界観を伝えられる点が、お椀の魅力だと思います」(奥田氏)

奥田 透

銀座 小十 奥田 透

Toru Okuda
1969年、静岡県生まれ。高校卒業後、静岡の割烹旅館「喜久屋」、京都「鮎の宿つたや」、徳島「青柳」を経て、99年に静岡に和食店をオープン。2003年に銀座で「小十」を開業。13年にパリ、17年にはニューヨークに出店。『ミシュランガイド東京』では二つ星の評価を得ている。
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