銀座 小十 奥田 透 本物のウナギは、喉元から胃に落ちる時に旨さを感じる

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世に出回っているウナギの99.6%が養殖で、天然は0.4%。その中でも1kgを超える大ウナギは1%か2%。名前は「ウナギ」だが、養殖はもちろん、天然の200 〜300gのものとは体の成り立ちも、成分も、味わいも異なる食材だ。やはり迫力が桁違い。これを、「銀座 小十」奥田透氏に炭火でタレ焼きを作ってもらった。

銀座 小十の鰻料理
ごく希少な存在である1㎏超の天然ウナギを、炭火で焼く。堂々とした存在感、みなぎるパワーは他の食材で味わうことができないもの。しっかりと焼いた皮の乾いた食感、強い弾力と力強い旨みを持つ身のコントラストもひときわ。

「串打ちしたウナギは、皮を下にして炭火でしっかりと焼きますが、皮と身の間にある脂が溶け出てくるので皮は揚げ焼きのようになります。皮の内側にあるゼラチン質もしっかりと熱し、溶かし出すのもポイント。そして身はふっくらと……という技術はもう、前提。ここまでの天然大ウナギとなると、ウナギそのものの存在自体が尊すぎて、料理人の技術なんかかすんでしまいます(笑)」(奥田氏)


それだけの世界観を持つ食材であり、そうした食材を使った料理こそが本物。ちなみに本物の料理は、舌の上というより、のみ込んだ後、喉元から胃に届くまでの間に、最もエネルギーを感じるもの。

この大ウナギがまさにそう。やはり本物の食材でないとそこまで訴えかける力がなく、その力を自然のままにいただけることこそが、日本料理の醍醐味であり誇るべき美点なのだ。

奥田 透

銀座 小十 奥田 透

Toru Okuda
1969年、静岡県生まれ。高校卒業後、静岡の割烹旅館「喜久屋」、京都「鮎の宿つたや」、徳島「青柳」を経て、99年に静岡に和食店をオープン。2003年に銀座で「小十」を開業。13年にパリ、17年にはニューヨークに出店。『ミシュランガイド東京』では二つ星の評価を得ている。
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