てんぷら近藤 近藤 文夫 蒸している、みずみずしい野菜の天ぷら

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天ぷら職人、「天ぷら近藤」の近藤文夫氏がずっと力を入れてきたのが、野菜の天ぷらだ。

「独立する前、「てんぷらと和食 山の上」にいた若い時にいろいろと工夫したんです。このにんじんの天ぷらもその頃考えたもの。当時は専門店の天ぷらといえば魚介ばかりで、『野菜なんて総菜』とたたかれたものだけど、食べてみればにんじんの甘みが強く感じられて香りもあるし、鮮やかなオレンジ色もきれい。野菜でも、しっかりと存在感のある天ぷらになるのです」(近藤氏)

衣は、ごく薄くつける。本当にサラリとした衣なので、にんじんをくぐらせても、衣がついていなように見えるほど。

野菜の天ぷら
ごく細切りのにんじんに、ごく薄く衣をつけて揚げる。薄くパリパリと軽快な衣、細いながらみずみずしく、甘みと香りが凝縮したにんじんの組み合わせが格別。繊細かつインパクトのある一品。

「でも以前NHKに、ごく細かいところまで映る超高速度カメラで撮ってもらった時、にんじんに、かろうじてまとうくらいに衣がついている様子がわかりました。油に入れるとワッと広がるのですが、余熱も考慮しつつ、頃合いを見て箸でまとめて引き上げます」(近藤氏)

ごく薄い衣の中で、ごく細切りにしたにんじんが自身の水分で蒸され、甘みが増す。天ぷらは揚げているようで蒸しているから、みずみずしく、本来の旨みと香りが生きた仕上がりになる。にんじんが苦手な人でも喜んで堪能できる、そんな一品だ。

近藤 文夫

てんぷら近藤 近藤 文夫

Fumio Kondo
1947年東京都生まれ。御茶ノ水「山の上ホテル」内「てんぷらと和食山の上」の料理長を務め、同店を天ぷらの名店に押し上げる。1991年「てんぷら近藤」を開業。著書、テレビでの出演多数。プレミアムな天ぷらを目当てに、世界中からファンが足を運ぶ。
このシェフについて