分とく山 野﨑 洋光 日本料理の品格と工夫が伝わる「涼」料理

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丁寧な仕事を徹底し、日本料理の感動を伝える。時代に合わせて進歩を続ける「分とく山」野﨑洋光氏の料理には、細やかな心くばりが感じられる。

蒸しアワビと生ノリの一品
蒸しアワビと生ノリの組み合わせを、3種類のたれ――トマトつゆ、胡麻だれ、胡麻加減酢――とともに。分とく山の定番料理「アワビの磯焼き」の変化形(柔水貝)。新ショウガ、焼きナス、花付きキュウリなど、夏らしいみずみずしい食材とともに盛り込む。

鉢にたっぷりの氷を盛り込み、そこにのせたガラスの器も涼しげなアワビの料理は、一気にテーブルに涼をもたらす一品。ただし主役のアワビはもちろん、3種類のたれも冷やしすぎない。ちなみにたれはトマトつゆ、胡麻だれ、胡麻加減酢の3種類。どれも、そのまま飲めるほどの控えめの味つけだ。「淡味ほど、贅沢なんです」と野﨑氏。ほどよい温度で、本来の旨みが豊かに感じられるアワビ。磯の香りが立つ生ノリ。涼感をたたえながらも、それぞれの個性が際立つ味つけで仕立てる。

トウモロコシと豆乳をゼラチンで寄せた「とうもろこし豆腐」が主役の一品。ゆでエビ、そうめん、キュウリなどとともに盛り付け、旨だしをかける。赤、黄、緑、白の彩りが鮮やか、かつ四角い豆腐と丸いエビのコントラストも楽しい、涼やかな印象を与える。

野﨑 洋光

分とく山 野﨑 洋光

Hiromitsu Nozaki
1953年福島県生まれ。「分とく山」総料理長。「とく山」料理長就任から38年、「分とく山」開業から今年で30年の長きにわたり、料理界の第一線で活躍し続ける。手をかけすぎない、かつ工夫を凝らした料理、カウンター越しに見せる誠実な仕事で多くの客を魅了。またコースで1万5000円という価格を30年間据え置きにして、幅広い層に日本料理を楽しんでもらう姿勢を貫く。テレビ出演も多く、著書は100冊超。日本料理の伝道師として、意欲的に働き続ける。
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