招福楼 東京店 中村 成実 招福楼の春爛漫4月の料理

Loading

茶懐石の心に沿った料理を提供する招福楼。「大切にしているのは、季節を存分に感じられること。旬の素材を主役に、できるだけ手を加えずに仕立てること。そして器、お軸、花、花入……空間全体と料理が調和することです」と4代目、中村成実氏。

今回、中村氏に春爛漫4月の料理を紹介してもらう。

「今回ご紹介するのは、春爛漫4月のお料理です。アイナメのフキノトウ焼きは、春に息吹く芽が持つほろ苦さを、春のごちそうであるアイナメの漬け焼きとともに味わっていただきます。フキノトウの独特な香りは、火取るといっそう際立ち、ふんわりと柔らかいアイナメと非常に良い相性を見せてくれます」(中村氏)

「招福楼」中村成実氏のアイナメのフキノトウ焼き
春のごちそう、アイナメを漬け焼きにし、炙ったフキノトウを散らす。骨切りされた身はふっくらと柔らかく、フキノトウのほろ苦い風味と調和。春らしい味覚を存分に味わう。

次に紹介してくれたのは、武者小路千家7代家元直斎の好みの、柳と桜の模様のお重に料理を入れて春を演出したもの。一の重(奥)には八寸、二の重(手前)には桜を題材にしたサヨリと赤貝の手毬寿司が。八寸の内容は、ウルイの黄味酢がけ、たらの芽の味噌漬け、雪洞に小柱の白子和え、一寸豆、半生の干し子の炙り、フキの生ハム巻き。

「招福楼」中村成実氏のお重
手前は赤貝、サヨリの手毬寿司。春といえば貝。美しい包丁目も映える。桜の花びらをかたどったショウガも季節を演出。奥はウルイ、たらの芽、小柱の白子和え、一寸豆、フキの生ハム巻き、半 生の干し子。春の味覚をたっぷり詰める。

「お料理のみを目の前にしたら、季節の風景の広がりが感じられる。一方、お料理を室内の中で見ると、全体の季節感を構成する重要な一部を担っている。そんなあり方が理想です」(中村氏)

Photo Masahiro Goda

中村 成実

招福楼 東京店 中村 成実

Shigemi Nakamura
1955年、滋賀県生まれ。「招福楼」の主人である中村秀太良氏の次男として生まれる。学生時代は妙心寺霊雲院にて小僧として過ごし、その後得度。80年より家業に戻り、92年より4代目を継ぐ。
このシェフについて