南禅寺 瓢亭 日比谷店 髙橋 義弘 西と東に合わせた料理

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京都と東京それぞれの食材に合わせて生まれる「瓢亭」の料理。新たなものでも450年の伝統になじんだ一品として仕立てられる。15代目・髙橋義弘氏による、DNAに刻み込まれた伝統と、時代に即した発想が光る「瓢亭」ならではの料理を紹介しよう。

旬の味覚と食感を盛り込んだ八寸

南禅寺 瓢亭 日比谷店の八寸
甘み、酸味、苦み、塩味などの旬の味覚と食感を盛り込んだ八寸。「東のほうがおいしい」というあん肝、瀬戸内産の穴子の鮨、紅芯大根の酢漬け、瓢亭玉子、フキノトウの天ぷらなど。

金目鯛や青柳などの貝類は関西ではあまり使わない。穴子は、瀬戸内産は身が締まっているが、江戸前の穴子はほわほわっとした食感が魅力である一方、揚げると水っぽくなる。

「西と東で食材が違うので、本店と日比谷店、それぞれに食材に合わせたお料理を瓢亭らしくご提供したいと思っています」と、背筋の通った柔らかなたたずまいで髙橋氏は言う。

名物の瓢亭玉子は新鮮な有精卵を使うが、時間と温度管理にこだわって調理するということ以外、特別なことはしない。出汁は先代が決めた、上品な旨みが特徴の鮪節と利尻昆布を、本店とは少し変えてひいている。

新しいことも「古参のスタッフと相談しながら、瓢亭らしさを突き詰めた上でお出しするので、伝統になじむものになっています」と髙橋氏。甘鯛と白味噌、丸大根を炊き合わせるなど、髙橋氏にとっては当然の組み合わせも、東京では個性となる。「仕立てが違うというか“こういう料理は関東では出ない”と言っていただいています」と話す。

茶懐石の椀

南禅寺 瓢亭 日比谷店の蛤のしんじょ
蛤のしんじょ。九十九里産の蛤を刻み、白身魚のすり身と合わせて。蛤のコリコリとした食感と旨みが、上品な鮪節と相性抜群。焼き麩の甘みと柚子の酸味を添えて。具がしっかり入った茶懐石らしい椀だ。

Photo Masahiro Goda

髙橋 義弘

南禅寺 瓢亭 日比谷店 髙橋 義弘

Yoshihiro Takahashi
1974年京都府生まれ。「瓢亭」14代当主の長男として育ち、大学を卒業後、石川県金沢市の料亭「つる幸」で修業を積む。京都に戻ってからは父とともに調理場に立ち、2015年に社長(当主)に。
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