東の灘と謳われた酒の町・大山

地名を冠した名酒・大山

加藤嘉八郎酒造

大山でただ一つ、地名を冠した「大山」という酒がある。1872(明治5)年創業、加藤嘉八郎酒造が手掛ける名酒だ。大山では後発だけに、「この地を代表する酒蔵となろう」と名付けられた。以来、その名に恥じない品質を保つため、杜氏を育て、新しい技術を取り入れ、機械化のための自社開発にも励んできた。

杜氏の志田潔さんに話を聞くと、そのこだわりは「食中酒としての酒造り」にあるという。

「日本海の海の幸と、庄内平野の米や野菜に恵まれた大山では、酒は食事と共に飲む食中酒として育てられてきました。新鮮な食材に合わせて飲むものですから、余韻は残っても、口の中に味が残らない、キレのある酒が求められます」

酵母が元気で、発酵の良い状態を保てなければ、キレのいい酒は生まれない。そこで、加藤嘉八郎酒造では、製造過程で合計9回、もろみの“健康診断をする”。「これだけやっているところは、全国でもまずないでしょう」と、胸を張る。

大山では今も、蔵同士の交流が盛んだ。それぞれの蔵から杜氏が集まり、酒造りについて議論を交わす。大山を含む山形県でも、近年、足並みをそろえることでブランド化に取り組んできた。日本酒は仕上げに炭を使って濾過することがあるが、ここでは炭を使わず、できるだけフレッシュな状態で出荷する。

「新鮮な食材をよりおいしく感じさせる、きりっとした淡麗辛口。これこそが、大山の酒なのです」

「大山」と、モンドセレクション最高金賞酒「吟雅凛匠」
「大山」と、モンドセレクション最高金賞酒「吟雅凛匠」。

加藤嘉八郎酒造
TEL0235-33-2008
https://www.sake-ohyama.co.jp/

Photo TONY TANIUCHI Text Rie Nakajima
※『Nile’s NILE』2013年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

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