特 集 「鮎 繚乱 —諧調の向こう側—」 -神田裕行・奥田透・飯塚隆太・リオネル ベガ・小林武志・鯰江真仁-
「鮎」といえば長良川、吉田川(岐阜)、「鮎」といえば四万十川(高知)、「鮎」といえば那珂川(茨城)、「鮎」といえば琵琶湖(滋賀)などなど数え上げればキリがない。
日本の河川に鮎が遡上し、落ち鮎となって川を下るまで、春の終わりから秋の中ごろまで、鮎は我々の食卓を飾る。
「鮎」という一文字で食卓の空気が「ケ」から「ハレ」へと一変するこの魚を、我々は何千年食してきたのだろうか。
——鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門 蕪村
昔も今も新鮮さが命。
鮎のうまさの瞬間を切り取るように6人のミシュランの料理人たちが料理する。
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JAPANESE
日本料理 かんだ | 神田 裕行
初めに「鮎」有りき
まず頭とはらわたの辺りをがぶりと食べてビールをぐいっ。次に胴体の身のほっこりしたところをがぶりと食べてビールをぐいっ。そして最後の一口でカリカリに焼けた尻尾をしゃくっと食べて「あー、終わっちゃった」とビールをぐいっ。こんなふうに、ビールを挟みながら三口で「がぶり・がぶり・しゃくっ」と攻めるのが、神田裕行氏の薦める「鮎の正しい食べ方」である。…
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JAPANESE
銀座 小十 | 奥田 透
苦味、甘味、旨味
「苦さと香ばしさの中に甘いところを見つけちゃった、そこから鮎のおいしさにはまる感じかな。でもね、その甘さは胆嚢が生きてるからこそ、探し当てることができるんです」と「銀座 小十」奥田透氏。ここから日本料理の神髄・鮎の塩焼き談義が始まった。…
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FRENCH
リューズ | 飯塚隆太
鮎が衣をまとう時
フレンチに鮎料理はない。というより鮎はフランスにいないし、魚を内臓まで一緒に食べるという概念もない。だから「鮎」という“お題”を受けて、「リューズ」飯塚隆太氏は悩みに悩んだ。「炭火で焼いた鮎の塩焼きには絶対に勝てない……勝ち負けじゃないんですけど、それ以上のおいしさを表現するのはムリだな、というのが頭にありました。でも受けた以上、やるしかないと腹をくくりましたよ。…
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FRENCH
エスキス | リオネル・ベガ
陰翳への挑戦!
「日本料理は一つの素材を突き詰めて、おいしさを凝縮させますね。そのアプローチの典型が鮎料理でしょう。一方、フランス料理はいくつかの素材を混ぜてバランスをとりながら、おいしいハーモニーを創出するもの。アプローチが全く違います。フランス人である私には、日本料理的な考え方やアプローチは存在しない。だから鮎でフレンチを作るのは難しい」とリオネル・ベカ氏は言う。…
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CHINESE
赤坂 桃の木 | 小林 武志
桃喰う鮎
川面を跳ねる鮎が、陽光を受けて黄金色に輝く——「赤坂 桃の木」小林武志氏はそんな躍動感あふれる鮎を表現した。塩焼きのこんがりと焼けた色合いとは違って、ある種の気品が感じられる黄金色の料理。姿態のくねり方もどこかしら優美だ。どんなふうに料理したのだろう。小林は「そこが中華のテクニック」といたずらっぽい笑みを浮かべながら、料理法を解説する。…
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CHINESE
マサズキッチン | 鯰江 真仁
クールで熱い皿
鯰江真仁氏は積極的に「異質」を取り入れながらも、「これぞ中華」の王道を行く料理人である。 基本は全て頭に入っていて、レシピはほとんど持たず、使う食材や気候、客の様子などを見て、その日のベストなさじ加減を加える料理スタイルを貫いている。その鯰江氏が2年ほど前だったか「近頃は和食の季節感にインスパイアされることが多いですね」と話していた。 鮎という初夏を象徴する食材に対して、どんな料理を発…
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