リューズ | 飯塚隆太 野菜ときのこを潔く!「リューズ」のハンバーグ

ハンバーグのキーワードは、"季節感"と"ヘルシー"

「リューズ」飯塚隆太氏が紹介するのは、椎茸がたっぷりと入ったヘルシーなハンバーグ。氏の故郷である新潟の郷土料理で、さまざまな野菜や漬物をきざんで合わせた「切り菜」からインスピレーションを得たソースをかける。肉、しいたけ、野菜の三者が豊かな変化を奏でる一品だ。

「リューズ」飯塚隆太氏のハンバーグ
豚肉と牛肉を用いたハンバーグは、ホッとする味。きゅうり、 トマト、みょうが、青じそをきざみ、粒マスタードや白バルサ ミコと混ぜた季節感豊かなソースは、シャキシャキとした歯 ごたえ、マスタードの粒々が心地よく響く。

故郷の味をベースに

飯塚氏が今回紹介するハンバーグのキーワードは、"季節感"と"ヘルシー"だ。そこで活躍するのが野菜。「旬の野菜をたっぷりと使い、夏らしさを存分に表現したハンバーグとしました。和風ハンバーグでは大根おろしにポン酢をかけているでしょう? そのヘルシーなイメージも、参考にしています」
 
この料理では、飯塚氏の故郷である新潟の郷土料理「切り菜」をベースにした野菜のソースを作った。

「切り菜は、季節の野菜と、たくあんや野沢菜漬けなどの漬物を細かくきざんで、ごま油、醤油などで味をつけ、よく混ぜ合わせたもの。ご飯にかけるなどして食べます」

フランス料理らしいニュアンスをプラス

ハンバーグをこねる飯塚氏

今回は、野菜はきゅうり、トマト、みょうが、青じそを使用し、夏真っ盛りの仕立てに。そして味付けは、飯塚氏のオリジナルとする―タスマニア産の粒マスタード、白バルサミコでフランス料理らしいニュアンスをプラスした。

ハンバーグ本体に椎茸をたっぷりと入れている点もこの料理の特徴だ。ただし、単に入れるのではなく、生椎茸と干し椎茸の両方を使って奥行きを出している。また、これらは炒めてからハンバーグの生地に加えるが、その炒め方が独特だ。まずは、みじん切りにした豚の背脂をフライパンで溶かし、同じくみじん切りにした干し椎茸を炒める。

「フランス料理の挽き肉料理というと、パテ・ド・カンパーニュなどのシャルキュトリーが定番です。そこでは豚の背脂が欠かせません。そのフランス料理らしい味わいを取り入れるため、背脂を使いました」

干し椎茸に薄い焼き色がついたら、椎茸の香りがフライパンから立ち上っているはず。そうしたらみじん切りにした生椎茸をプラス。しんなりとしたら、干し椎茸のもどし汁をひたひたに加える。これを強火で汁気がなくなるまでしっかりと煮詰める。

「液体を加えて、煮詰める。一度液体に具材の風味を引き出し、再度具材に吸わせることで、旨みを凝縮させるのです。これも、フランス料理で定番の技術。もどし汁も凝縮し、格段に風味が高まります」

この後にニンニクと玉ねぎのみじん切りを加えるが、玉ねぎは食感が残る程度の火入れ加減にとどめる。

地元の素材を発掘!その魅力を発信

肉は、豚のバラ肉の挽き肉と、牛のランプ肉を使用。またハンバーグを焼く前、成形したハンバーグの表面をていねいになで、なめらかにするのがポイント。こうすると焼き色が美しくつくとともに、焼いているときの肉汁の流失を防ぎ、完成時の見た目の洗練度がアップする。

ちなみに、豚肉は新潟県十日町のブランド豚「妻有(つまり)ポーク」を使っている。「妻有ポークは香り良く、口溶けも良い脂が特徴。身のきめ細かさ、味の良さも抜群です」と飯塚氏。そして生椎茸は、新潟県南魚沼市名産の「八色(やいろ)しいたけ」。肉厚と風味の豊かさで知られている。普段から地元で産する上質な素材を発掘し、その魅力を積極的に伝える飯塚氏。そんな飯塚氏らしさも垣間見ることができるハンバーグだ。

「椎茸ハンバーグ 夏野菜ソースとミックスベジタブル」作り方

材料

<ハンバーグ>
豚バラ肉の挽き肉 300g
牛ランプ肉(手切りの粗みじん切り、ミンチなら粗挽き) 400g
塩 6g
卵 1個
黒こしょう(粗挽き) 2g
椎茸と玉ねぎのソテー 160g

<椎茸と玉ねぎのソテー>
豚背脂(みじん切り、またはサラダ油) 40g
干し椎茸(水でもどしてみじん切り) 60g
生椎茸(みじん切り) 50g
干し椎茸のもどし汁 適量
玉ねぎ(粗みじん切り) 60g
ニンニク(みじん切り) 2g
塩 1.5g
粗挽き黒こしょう 適量

<夏野菜の切り菜>
きゅうり、みょうが、トマト(それぞれ細かい角切り)、青じそ(みじん切り) 各適量
タスマニア産粒マスタード、太白ごま油、白バルサミコ酢、白醤油 各適量

〈ミックスベジタブル〉
バター、にんじん(角切りにしてゆでる)、とうもろこし(ゆでる)、枝豆(ゆでてさや、薄皮を除く) 各適量
〈他〉 クレソン

作り方

  • ハンバーグの材料
    肉は豚バラ肉と牛ランプ肉を使用。豚のバラ肉は、飯塚氏の故郷である新潟県十日町のブランド豚「妻有ポーク」。生椎茸は、新潟県南魚沼市名産の「八色しいたけ」。
  • 肉を混ぜる様子
    氷をあてたボウルに豚バラ肉、塩の半量を入れて練り混ぜる。粘りが出たら牛ランプ肉、残りの塩を加えて混ぜ合わせる。その後、溶いた全卵を加えて混ぜる。
  • 混ぜた肉に椎茸と玉ねぎのソテーを加える様子
    黒こしょうと、“椎茸と玉ねぎのソテー”を加え混ぜる。“椎茸と玉ねぎのソテー”は、熱した豚背脂で干し椎茸を炒め、生椎茸を加え炒め、干し椎茸のもどし汁を加え混ぜ、汁気がなくなるまで強火で煮詰め、ニンニク、玉ねぎを手早く加え炒めたのち、塩、黒こしょうをしたもの。
  • ハンバーグを成形する様子
    サラダ油(分量外)をぬった手で1個あたり200 〜220gの生地をとる。パンチングをして空気を抜き、成形する。表面をよくなで、なめらかにする。
  • ハンバーグを焼く様子
    フライパンに少量のサラダ油(分量外)を引き、中火で3分間ほど焼いて焼き色をつける。ひっくり返して2分間ほど焼く。火をごく弱火にし、ふたをして4 〜5分間蒸し焼きにする。
  • 夏野菜の切り菜を作る様子
    新潟の郷土料理「切り菜」をもとに発想した夏野菜の切り菜は、材料をよく混ぜ合わせる。皿にのせたハンバーグに好みの分量を盛り付ける。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

飯塚隆太

リューズ 飯塚隆太

Ryuta Iizuka
1968年新潟県生まれ。専門学校卒業後、「第一ホテル東京ベイ」「ホテル ザ マンハッタン」等を経て、94年「タイユバン・ロブション」の部門シェフに就任。97年に渡仏し、「トロワグロ」「ジャンポール・ジュネ」等で修業。帰国後、ジョエル・ロブション氏の系列店で研鑽を積み、2005年「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のシェフに。11年「レストラン リューズ」をオープン。12年版『ミシュランガイド東京』で一つ星、13年版以降は二つ星の評価を得ている。
このシェフについて