リストランテ ホンダ | 本多 哲也 圧倒的なホンダスタイル

定番の家庭料理をリストランテのクオリティーで

「リストランテ ホンダ」の本多哲也氏が紹介するのは、牛100%でトリュフ入りの生地のハンバーグを赤ワインベースのソースで軽く煮た一品だ。仕上げに目玉焼きをのせ、トリュフをたっぷりと削った。牛肉、トリュフ、ソースが一体となって作り出す深みは、リストランテの味そのものだ。

コロナ禍の中、多くのレストランがテイクアウトや配送での料理の販売に取り組むようになった。「リストランテホンダ」でもコロナを機にコースセットとアラカルトの品々の販売を開始したところ、好評を博したため、現在も続けている。今回紹介するハンバーグは、その中でも人気の一品「尾崎牛の煮込みハンバーグ」をベースに、トリュフを加えたものだ。

「ハンバーグは定番の家庭料理。誰もが親しみを持っています。そんなおなじみの料理をリストランテのクオリティーで楽しんでいただこう、という一品です」

リストランテホンダのハンバーグ
尾崎牛を用いた牛100%のハンバーグは、かむごとに力強 い肉の味、上質な脂の風味があふれ出る。それが、赤ワイン ソースがベースの旨み豊かなソースと混じり合う。さらにト リュフの香りが加わる贅沢な仕立て。リストランテの技術で 作る、ワンランク上のハンバーグだ。

売り先をなくしてしまった尾崎牛を使って

ハンバーグを作る本多哲也氏

ハンバーグで使う牛肉は、多くの一流シェフたちから高い評価を得ている宮崎の尾崎牛を使用。ちなみに本多氏は17年前の「リストランテホンダ」のオープン時からこれを用いている。

今回のハンバーグは牛100%で、尾崎牛のネックとスネの挽き肉を使っている。ネックとスネは肉に硬さがあるが、赤身の旨みがとりわけ強い部位なので、挽き肉にして洋食店のハンバーグで用いられることが多い。

「いつもは人気で取り合いになっている部位ですけれど、去年の4、5月の緊急事態宣言下、多くの洋食店が店を休業したので売り先をなくしてしまった。それで、うちの店で買い取ることで少しでも助けになれば……という経緯もあってハンバーグの販売を始めたのです」

この挽き肉に、炒めた玉ねぎ、卵、パン粉を牛乳でふやかしたつなぎなどを加えて生地とするが、今回はそこにトリュフのみじん切りもプラス。生地は成形し、フライパンで表面にしっかりと焼き色をつけながら火を入れ、その後、ソースで軽く煮込んで仕上げる。

洋食屋のスタイルながら、味は洗練とインパクトのあるリストランテのもの

このソースは、赤ワインソースをベースに、炒めた玉ねぎとマッシュルーム、トマトソースを加えたもの。特に赤ワインソースは手間と時間をじっくりとかけて作られている―玉ねぎ、にんじん、セロリを甘みが出るまで炒めたところにたっぷりのポートワインを注ぎ、煮詰める。そこに赤ワインを注ぎ、再度煮詰める。さらにフォン・ド・ヴォーを加え、再々度煮詰めて漉こ す、という手順だ。ワインをふんだんに用い、煮詰めることで上質な酸味と凝縮感が生まれる。これとフォン・ド・ヴォーの厚みのある旨さが渾然一体となった味わいが、赤ワインソースの持ち味となる。そして、そこに赤ワインソースとはまた異なる方向の旨みと酸味を持つトマトソースが合わさることで、味の深みと広がりが一気に増す。「このソースは、店でも出す牛頰肉の煮込みのベースと同じ」と本多氏。旨さは折り紙付きだ。
 
盛り付けでは、ハンバーグにソースをたっぷりとかけ、目玉焼きをのせ、トリュフを削りかける。「ハンバーグに目玉焼き」という洋食店の懐かしいスタイルでありながら、味は洗練とインパクトのあるリストランテのもの。尾崎牛の上質で力強い香りと旨み、それと十分に釣り合う深みのあるソース、そしてトリュフの香りが混ざり合い、このうえなく贅沢な味わいを作り出す。

「黒トリュフ入り尾崎牛の煮込みハンバーグ」の作り方

材料

<ハンバーグ>
尾崎牛挽き肉 500g
ニンニク(みじん切り) 大さじ1/2
玉ねぎ(みじん切り) 1.5個分
パン粉 1/2カップ
牛乳 50㏄
全卵 1個分
塩 4g
黒こしょう 0.5g
ナツメグ 少々
黒トリュフ 12g
オリーブオイル 適量

<赤ワインソース>
ニンニク 1.5片
玉ねぎ(5mmのスライス) 1個
にんじん(5mmのスライス) 1/2本
セロリ(5mmのスライス) 1/2本
ポートワイン(赤) 190㏄
赤ワイン 375cc
フォン・ド・ヴォー 600㏄

<他>
玉ねぎ(5mmのスライス) 1個
マッシュルーム(5mmのスライス) 8個
トマトソース 60g
塩・黒こしょう 適量
オリーブオイル 適量

作り方

  • ハンバーグの材料
    牛肉は尾崎牛の挽き肉を使用。ニンニクのみじん切りを炒めて香りを出したところに玉ねぎのみじん切りを加え、水分を飛ばすように炒め、冷ましておく。パン粉は牛乳に入れ、しっかりとふやかしておく。
  • ハンバーグの材料を混ぜ合わせる様子
    尾崎牛の挽き肉に塩を加え、粘り気が出るまでしっかりと混ぜる。ふやかしておいたパン粉、全卵、炒めた玉ねぎ、トリュフ、黒こしょう、ナツメグを加え、よく混ぜ合わせる。
  • ハンバーグを焼く様子
    冷蔵庫で1時間ほどやすませた生地を200gずつに分けて成形し、中火のフライパンで両面にしっかりと焼き色をつける。
  • 煮込みソースを作る様子
    煮込みソースを作る。ベースの赤ワインソースは、潰したニンニクを炒め香りを出し、玉ねぎを軽く炒め、にんじん、セロリを入れて甘みが出るまで炒めたらポートワインを加え1/3に煮詰める。赤ワインを加え再度1/3に煮詰め、フォン・ド・ヴォーを加えさらに1/3に煮て漉す。
  • 煮込みソースを作っている様子
    別の鍋で、潰したニンニクを炒めて香りを出し、玉ねぎを炒め、しんなりしたらマッシュルームを加え、炒めながら水分をとばす。ここに赤ワインソースとトマトソースを加え、2/3に煮詰める。塩、黒こしょうで味をととのえて、煮込みソースとする。
  • ハンバーグを煮込む様子
    ハンバーグを煮込みソースに入れ、5 〜10分間煮込む。同時進行で、ハンバーグの大きさに合わせた目玉焼きを作る。盛り付けでは、ハンバーグにソースをかけ、目玉焼きをのせ、トリュフのスライスをかける。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

本多 哲也

リストランテ ホンダ 本多 哲也

Tetsuya Honda
1968年神奈川県生まれ。東京調理師専門学校卒業後、「リストランテ トゥーリオ」などで経験を積み、97年に渡仏・渡伊。イタリアの三つ星レストラン「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ本店」などで修業後、99年に帰国。「リストランテ アルポルト」にて副料理長を務めた後、2004年に「リストランテホンダ」をオープン。『ミシュランガイド東京』で一つ星の評価を得た。 
このシェフについて